新しい抗アルツハイマー病治療薬レケンビ®New anti-Alzheimer's disease drug Leqembi®

新しい抗アルツハイマー病治療薬
レケンビ®による治療を始めました
令和5年12月に新しい抗アルツハイマー病治療薬レケンビ®(一般名レカネマブ)が発売されました。これまでの薬剤とは全く異なる薬理作用を有し、アルツハイマー病の原因となる脳内に貯まったアミロイドベータというタンパク質を除去することにより症状の進行を抑制する効果が期待できる薬剤です。

これに伴い当院でもレケンビ®を適切、安全に投与する体制を整え、令和6年2月より投与を開始しています。この薬剤による治療に関心が有る方や希望される方に当院での治療の概要をご説明いたします。

投与対象となる方は?

レケンビ®による治療の対象は「アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)」または「アルツハイマー病による軽度の認知症」の方です(これ以外の方々への効果は現時点で確認されていないか、効果は期待できません)。また重い副作用を生じる可能性があるため、厚生労働省が定めた「最適使用推進ガイドライン」によりさまざまな要件が定められています。本剤の対象となる方は以下の1〜3の項目を全て満たす必要があります。

  • 01

    認知機能低下の原因がアルツハイマー病である

    脳脊髄液検査またはアミロイドPET検査でアルツハイマー病であることを確認する必要があります

  • 02

    軽度認知機能障害(MCI)あるいは軽度の認知症である

    ミニメンタルステート検査や臨床認知症評価尺度で基準値内であることが必須です

  • 03

    脳MRI検査で脳浮腫や脳出血などの所見を認めない

アルツハイマー病とは

アルツハイマー病は、脳におけるアミロイドベータと呼ばれる蛋白質の異常が病気を引き起こすと考えられています。
正常な状態では、アミロイドベータは産生されてもバラバラのまま脳から取り除かれますが、アルツハイマー病の人ではかたまりを作って脳の中にたまります。このかたまりが神経細胞を障害することで、神経細胞の働きが落ち、数が減って脳の萎縮が進むと考えられています。

アルツハイマー病とは

アルツハイマー病の進行について

アルツハイマー病は長い時間をかけて少しずつ進行していきます。
アミロイドベータの蓄積が始まる頃は、認知機能は正常で症状もありませんが、アミロイドベータが多くたまってくると、神経細胞が障害されて認知機能が低下していきます。軽いもの忘れなどの症状があらわれる軽度認知機能障害(MCI)の状態から、日常生活に支障をきたすアルツハイマー型認知症へだんだんと進行します。

アルツハイマー病の進行について

アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)とは

アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)は、アルツハイマー型認知症になる一歩手前の段階です。症状は記憶障害が中心で、以前に比べてもの忘れが目立ってきます。
また記憶以外にも、以前よりぼーっとしていることが増えた、料理の味付けが変わった、計算ミスが増えたなどの症状がみられることもあります。

アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)とは

アルツハイマー型認知症への進行

アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)は、買い物や家事など少し複雑な動作(手段的ADL※)に一部障害を生じてくるものの、自立した生活を送れる状態です。さらに認知機能が低下してアルツハイマー型認知症に進行すると、手段的ADLの障害が常態化し、さらには食事や会話、歩くことなど生活に必要な動作(基本的ADL)が徐々にできなくなり、生活が困難で介護が必要な状態になります。
アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)は、通常は数年でアルツハイマー型認知症になるといわれていますが、早期に対策を行うことで、認知症への進行を遅らせることができる可能性があります。MCIの段階での早期発見が、認知症の発症予防に重要なのです。

※ADL(Activities of Daily Living):生活に必要な動作

アルツハイマー型認知症への進行

レケンビ® とは 
どのような薬ですか?

レケンビ®は、「アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)」と「アルツハイマー病による軽度の認知症」に対する薬です。主としてアミロイドベータプロトフィブリルに作用します。
アミロイドベータプロトフィブリルは、アミロイドベータがかたまりになる途中の物質で、レケンビ®がアミロイドベータプロトフィブリルにくっつくことで、異物を排除する細胞のミクログリアを引き寄せ、アミロイドベータを取り除きます。
その結果、脳のアミロイドベータが減り、アルツハイマー病の進行が遅くなることが期待されています。

治療の効果は?

事前に行われた日本を含む国際共同試験では、主要評価項目である日常生活における機能障害の評価(CDR-SB)で18か月の投与期間中に症状の進行を27%抑制しました(18か月の投与により症状の進行を5.3か月遅らせたことに相当します)。このように認知機能低下の進行をゆるやかにする効果が期待されます。しかし、既に生じている症状の改善や進行を停止する効果は期待できません。

治療の効果は?

治療をうけるには?

まず当院脳神経内科外来を受診していただきます。かかりつけ医がいる方はかかりつけ医にご相談いただき受診予約をおとりください。かかりつけ医がおられない方は当院の外来または患者サポートセンター(TEL 025-260-8101にご連絡ください。受診日のご相談をさせて頂きます。
この薬剤による治療にあたってはもの忘れなどの症状があり、その原因がアルツハイマー病であることを確実に診断することが「最適使用推進ガイドライン」で定められています。このためまず脳神経内科医師の診察、神経心理検査、血液検査、MRI検査などを数回に分けて受けていただきます。特に初診時はご本人の日常生活の様子をよくご存じの方と受診してください。これらの検査でレケンビ®による治療の対象となりうるか、安全に治療を受けて頂くことが可能か否かを判定します。そのうえで脳内にアミロイドベータが蓄積していることを確認するため、脳脊髄液検査またはアミロイドPET検査のいずれかを受けていただきます。アミロイドベータの確認は必須であり、検査の結果アミロイドベータの蓄積を確認できなかった場合この薬剤による治療は適応外となります。

治療をうけるには?

治療開始~開始後の
注意点は?

治療は点滴により行われ、約1時間の点滴ののち10~30分程度の経過観察を行います。初回治療時のみアレルギー反応などに十分備えるため入院(1泊2日)して頂きます。以後は2週間毎に通院して頂き、外来で点滴治療を継続します。通常18カ月間にわたり治療を継続します。

投与の間隔と方法

レケンビ®を初めて投与する前にはMRI検査が必要です。
また治療開始後においては、5回目の投与前(投与開始後2 ヵ月までを目安)、7回目の投与前(投与開始後3ヵ月までを目安)、14回目の投与前(投与開始後6 ヵ月までを目安)にはMRI検査を実施します。それ以外においても必要に応じてMRI検査を医師の指示にしたがい、必ず受ける必要があります。
なお、薬の投与中は6 ヵ月ごと、また投与開始後18 ヵ月を目安に、医師が症状に基づき薬の効果や病気の進み具合などを確認し、レケンビ®での治療の継続または中止を判断します。またそれ以外にも、有害事象の発生や副作用の発現状況を評価し、医師が治療の中止を判断する場合もあります。

治療に伴う副作用

薬剤の投与に伴うおもな副作用として、①急性輸注反応(いわゆるアレルギー反応)および ②アミロイド関連画像異常(アリア)があります。

  • 1 急性輸注反応(いわゆるアレルギー反応)

    頭痛、悪寒、発熱、吐き気、嘔吐などの症状が出ることがあります。多くは比較的軽微ですが、必要に応じ解熱鎮痛薬、抗アレルギー薬などを併用します。

  • 2 アミロイド関連画像異常(アリア)

    薬剤によりアミロイドベータが除去される過程で脳内の微小な血管に負担がかかり、脳にむくみや出血が起こる現象です。これらの多くも無症状ですが、まれに頭痛、錯乱、視覚障害、眩暈、吐き気、歩行障害などの症状が現れることがあります。このため安全に治療を継続するために定期的なMRI検査を受けていただく必要があります。これらの症状の出現や、無症状でもMRIで中程度以上のむくみや出血を認める場合は一時的な休薬や以後の治療が中止となることがあります。

治療費の概算は?

医療費(一月あたり) 約33万円
保険適応後の自己負担額 1割負担 約33,000円程度
2割負担 約66,000円程度
3割負担 約99,000円程度

多くの方は高額療養費制度が利用できますので一定の自己負担額を超える分の払い戻しがありますが、薬剤の投与量(体重により投与量が異なります)、年齢、収入に応じて変動しますので、ご希望により事前にソーシャルワーカーとご相談頂くことも可能です。

その他の
注意事項について

  • 診察や必要な検査の結果、レケンビ®による治療の適応外と判定されることがあります。その場合は引き続き通常の診療(これまで使用されてきた抗認知症薬、認知症リスク管理および進行予防のために必要な生活習慣の指導、介護認定の申請など)を提供させていただくか、かかりつけ医のもとでの診療を再開していただきます。

  • 脳内のアミロイドベータを確認する際のアミロイドPET検査は、新潟県立がんセンター新潟病院にて行っていただきます。脳脊髄液検査は当院にて1泊2日の入院となります。

  • 2週間毎の通院継続が困難な方や、MR検査が施行できない医療機器を体内に埋込または留置されている方は適応外となります。

  • インターネットの閲覧が可能の方は当院受診前に治療の概要についてエーザイ(株)レケンビ®ウェブサイトでご覧頂くことをお勧めします。

  • 抗血小板薬や抗凝固薬の服用有無、脳梗塞や脳出血の既往、心房細動などの不整脈の有無が治療の適応を判断するにあたり重要な情報となりますので、かかりつけ医がおられる方は診療情報提供書の記載をかかりつけ医へご依頼ください。なお当院は紹介受診重点医療機関に指定されており、診療情報提供書なしで初診された際には選定療養費として7,700円を申し受けることになっております。

  • 不明点につきましては当院患者サポートセンター(TEL 025-260-8101にお問い合わせください。

本治療が早期アルツハイマー病の方々の福音となることをスタッフ一同 願っております。

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